二宮春将57577
娘さん 神楽を見ては くれまいか 日本が誇る この芸術を !
これは私の遠縁に当たる二宮正治のおばあさんが十五歳だった頃(大正10年頃か)、呉線がもう開通していて、その沿線の町は賑わっていた。
二宮正治のおばあさんは広島県の呉市に住んでいたが、和裁をしていたので、海田(現、安芸郡)矢野(現、広島市安芸区)坂(現、安芸郡)天応(現、呉市)の各町に自分が縫った着物を届けに呉線を利用してこれらの街を訪れたそうである。
時代は大正デモクラシーの時代で、世の中は新しい時代へと向っていた。
「娘さん、神楽を見ていってくれないか」
この江戸時代生まれのお年寄りの哀願するような口調に根負けして、二宮正治のおばあさんは神楽を見たが腹の底では、
「今更江戸時代でもあるまい、時代が違うのだ」
と思ったそうである。
私はこの平成の時代に、若者が神楽を楽しんでいるのを見るとこのエピソードを思い出すのである。
「月日は流れたが、神楽は廃れていない」
この世が続く限り、この伝統芸能を守ってもらいたい。
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