2010年8月31日火曜日

小説 女の子が必ず通る道 第11回 8月31日

 健太につれなくされた早苗は、あてもなく街を歩いた。
「すばらしい恋をしようと思うのだけれど、なかなか自分の思い通りにはならない」
 早苗の目から涙が零れ落ちた。
あてもなく歩いていると、
「なに寂しそうに歩いているんだ」
 と早苗に声をかけてくる若い男がいた。
「寂しくて」
 早苗が本音を言うと、
「おれが慰めてやるよ」
 この若い男は早苗に強引に迫ってきた。
早苗は理性より興味のほうが勝っていた。言われるままにこの若い男についていったのである。
 やがて、この若い男は公園の暗がりで早苗を抱きしめて全身を愛撫し始めた。
「止めて・・・・・・・・・・・」
 口でこう言うものの、早苗に抵抗できる力は残っていなかった。

2010年8月27日金曜日

小説 女の子が必ず通る道 第10回 8月27日

「悪い思い出は捨て去ろう。良い思い出を自分で作るのに限る」
 こう思った早苗はある日同級生の健太に、
「私を抱きしめて・・・・・・・・・」
 と迫ったのだった。
早苗は自分の気持を健太はしっかりと受け止めてくれると思ったのだ。だが、
「いきなりそんな事を言われても・・・・・・・」
 こう言って、怪訝そうな顔をして早苗を見たのである。
「私の気持を分からないの」
「分からなくもないが」
「だったら抱きしめて」
「いきなりそんな事言われても」
 押し問答が続いた。
どれくらいの時間が経過したろうか。
「これは駄目だ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 早苗は自分の健太への思いが空回りしている事に気づいた。
「もういい・・・・・・・」
 力なく自分に言い聞かすようにこう言って、早苗は健太に背を向けて歩き出したのである。

2010年8月26日木曜日

小説 女の子が必ず通る道 第9回 8月26日

「あああ、助けて痴漢に襲われる・・・・・・・・・・・・・・」
 早苗は大声で叫んだところで目が覚めた。
「痴漢に襲われる夢」
 を見たのである。
どうも、一週間前に本当に痴漢に襲われたのがトラウマとなり、悪い夢にうなされるようになったのである。
「目が覚めたらいつもびっしょりと汗をかいている」
 早苗は悪い夢を見ることにうんざりするのだった。
ある日、早苗はその事を先輩の中村幸彦に相談すると、
「可哀相にねえ」
 こう言って、早苗の髪を優しく撫でてくれるのだった。
早苗はその行為がなぜか心地よかった。
「気持いい」
 心のなかでこう叫んでいた。

2010年8月25日水曜日

小説 女の子が必ず通る道 第8回 8月25日

「痴漢です、助けてください」
 早苗はありったけの大きな声で助けを求めた。
だが、助けはなかなか来ない。
「手がだんだん体の中心に迫ってくる」
 早苗は痴漢の中年男の手を噛んだ。
それでも攻撃は止まらない。
早苗も必死である。
「いい加減にしろよ。このスケベ男」
 ありったけの大きな事で早苗は叫んだ。
この声を聞いてやっと近所の人が早苗の元に駆けつけてくれたのだった。
「おい痴漢、おとなしくしろ」
 みんなが腕を捕まえて、痴漢をねじ伏せたのである。
早苗は大きくため息をついて、周りの人に、
「ありがとう・・・・」
 と言ったのである。
九死に一生を得たのだった。    

2010年8月24日火曜日

小説 女の子が必ず通る道 第7回 8月24日

 学校からの帰宅途中、早苗は中年男性から道を尋ねられた。
「公民館への道を教えてくれませんか」
 この言葉に早苗はちょうど帰り道の途中に公民館があり、しかもその道は他所から来た人には分かり難いものだったので親切心で、
「私もその場所を通りますので・・・・・・・・・・・」
 と言ってついてくるように言ったのである。
この親切心が裏目に出た。
「この男、ベテランの痴漢だったのである」
 暗い路地裏に入った瞬間、この中年男は早苗に抱きついてきたのだった。
早苗はびっくりして、
「ありったけの大声を出して助けを呼んだ」
 だが、中年男のアタックは止まらない。
「この痴漢野郎、何するんだよ」
 早苗は伸びてくる中年男の腕を振り払うのに精一杯だった。
 

2010年8月23日月曜日

小説 女の子が必ず通る道 第6回 8月23日

「君が好きだ・・・・・健太がこう言ってくる。その横から先輩の中村幸彦がぼくも早苗が好きだと言い寄ってきた」
 早苗は困惑した。
「だめ、だめ、だめ・・・・・・・二人いっぺんに愛せない」
 早苗は涙声になった。
そして、最後に両方から一度に二人が早苗を抱きしめたのだった。
「あああああああ、だめ・・・・・・・・」
 絶叫したところで早苗は目が覚めた。
「夢か、夢でよかった。こんな事が現実にあったら困る」
 早苗はほっとした。そして、なぜか自分の敏感な部分をまさぐるのだった。
「そこはぐっしょりと濡れていた」
 早苗は自分でも気づかないうちにその部分を自分の指で愛撫していたのである。
「あー、あー、あー、あー、」
 快いあえぎ声が早苗の口から洩れた。
「ああ、ああ、健太、健太」
 早苗の口から最初に出てきたのは、健太の名前だ。

2010年8月22日日曜日

小説 女の子が必ず通る道 第5回 8月22日

「健太君の肌は絹の肌」
 早苗が健太にこう言うと、健太は大笑いをするのだった。
「どうして笑うの、人が真剣に言っているのに」
 早苗はふくれっ面をして健太に言葉を返した。
「だってその言い方、王様の耳はロバの耳に聞こえたんだもん。気に障ったらごめん」
 健太は素直に謝った。
「そう言われると、私の言い方は王様の耳はロバの耳の聞こえるよね」
 と早苗も今度は笑いながら言葉を返したのである。
「早苗ちゃんは、ぼくの事を真剣に愛そうとしている、ありがとう」
 健太が大真面目に早苗にこう言った。
「分かってくれるの、うれしい」
 早苗はこう言うな否や、自分の頬を健太の頬にくっつけるのだった。
「気持ちいい」
 健太が恍惚の表情を浮かべて早苗にこう言った。
「私の事好き」
「うん」
 二人の間に恋の物語の甘い序章の雰囲気が漂ったのである。

2010年8月21日土曜日

小説 女の子が必ず通る道 第4回 8月21日

「中村先輩も悪くはないが、健太も捨てがたい」
 早苗の心は揺れ動いていた。
ある日早苗は同級生の健太を街が見える小高い丘に誘った。そして、健太の頬にそっと自分の頬をすり寄せるのだった。
「気持ちいい」
 早苗が健太に聞いた。
「うん・・・・・・」
 驚いたように健太が言葉を返した。
「私の事好き」
「うん」
 押し問答が続いた。
健太は早苗のパワーに圧倒されているようだった。
「健太君の肌はすべすべして気持がいい」
 早苗は健太に対する思いをぶつけ、健太の気を引くのであった。早苗は恋に恋して、恋にもがく年頃であった。  

2010年8月20日金曜日

小説 女の子が必ず通る道 第3回 8月20日

 早苗は先輩の中村幸彦がギターの弾き語りで演奏してくれる、
「昭和四十年代のフォークソング」
 に酔いしれていた。
「真夜中のギター、悲しくてやりきれない、風、花嫁、・・・・・・」
 昔の歌だが、早苗にとってはなぜか新鮮に感じられるのだった。
「すばらしい・・」
 早苗がこう言うと、突然中村幸彦は早苗を抱きしめ頬ずりをしたのである。
「有無を言わさぬ強い力で早苗を抱きしめ、中村は自分の頬を早苗の頬にくっつけたのだった」
 早苗は、ある程度は予期していた事とは言え、
「やはり未知なる世界」
 の出来事だった。
その日、早苗は体の振るえが止まらないでいた。だが、
「何かしら得体の知れない快感」
 に酔いしれたのである。
「これは何なんだ」
 自問自答したが、結論がでるはずもなかった。
色々な思いが自分の頭の中に浮かんできたが、
「今日のこと以上の事」
 を期待している自分をそこに見出した時早苗は、
「自分に対しての驚き」
 を自覚したのである。 

2010年8月19日木曜日

小説 女の子が必ず通る道 第2回 8月19日

 早苗はいつの頃からか夜ベッドで、自分の指で自分の敏感な部分をまさぐるのが日課のようになっていた。
 その時決まって思い浮かべるのが、
「先輩の中村幸彦か同級生の健太「
であった。
 日替わりメニューのように、
「ある日は中村幸彦そしてまたある日は健太」
 といういうに、その日の成り行きで思い浮かべる相手が違っていたのだ。
「初体験はどっちになるんだろう」
 早苗にもそれは分からなかった。
「神様が決めてくれえるだろう」
 そう信じるのが一番良いと自分に言い聞かせる毎日だったのである。
ある夜早苗は夢を見た。
「突然、先輩の中村幸彦が覆いかぶさってきたのである」
 早苗は、中村の事は嫌いではなかったが、やはりいざとなると怖かった。
「だめ、だめ、だめ」
 早苗は絶叫した。
それでも中村はしつこく早苗に迫ってきた。
「止めて・・・・・・・・・・・・」
 こう叫んだところで目が覚めたのだった。
「夢か・・・・・・・・・・」
 早苗は汗をびっしょりとかいていた。
「夢でよかった」
 ため息をついた早苗だが、なぜか敏感なところは激しく濡れていたのである。 

2010年8月18日水曜日

小説 女の子が必ず通る道 第1回 8月18日

 16歳の女の子早苗は暑い夏の夜、なかなか寝付かれなかった。ベッドの中で色々な思いが交錯して寝返りを打っていたのである。
「私はどんな人と初体験をするのだろう、女としてどんな人生を歩むのだろう」
 こんな事ばかり考えていた。
「同級生の健太だろうか。それとも小学生の頃、私をものすごく可愛がってくれた中村幸彦さんだろうか」
 早苗は好きな男性が二人いたのである。
「一人は同級生の健太、もう一人は7歳年上の中村幸彦だった」
 早苗と健太は幼稚園の頃からずっと一緒で気心が知れていた。中村幸彦は小学校の先輩で
早苗に英語を良く教えてくれていて、早苗は淡い恋心を抱いていたのである。
「同級生の中にはすでに初体験を済ませた人がかなりいる。私はまだ男性と接触した事がない」
 これは早苗にとって品行方正の証明でもあり、残念な事でもあった。
「相反する二つの心」
 これが早苗の心に渦巻いていたのだった。
「はやく初体験を済ませたい」
 夏が一日一日と過ぎてゆく時、早苗の気持は初体験を早く済ます方向へと傾いて行った。